介護×IoTが描く明日(ミライ)

連載:三重ふるさと新聞、伊賀タウン情報YOU(2018年8月より全10回)

①介護におけるIoT

IoT技術は介護の分野にも領域を広げています。この技術の導入には、マンパワーの置き換えだけではないメリットが。
技術はどのようなミライを描くのでしょうか?
2000年頃に提唱された「IT革命」からおよそ20年。IT(情報技術)はICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)と少しずつかたちを変えながら領域を広げ、スマートフォンで操作できる家電や自動車の自動運転システムなど私たちの身近に来ています。

介護業界ではどうでしょうか? 「介護」と聞くと、老人ホームで介護士が高齢の方のお手伝いをしているシーンを想像される方が多いでしょう。そこに「技術」の姿は想像しにくいかと思いますが、着実にIoT技術は介護業界にも広がりつつあります。
たとえば、徘徊感知機器。従来品は、ベッドやドアの近くにマットを設置することで、それを踏んだ時に通知が支援者の元に届くようになっています。私たちが現在開発しているIoT技術を利用した製品では、センサ技術によって、「ベッドから体を起こした」時点で気付くことができます。

こういった技術の導入は、介護をする側の肉体的負担だけでなく、常に「不測の事態は発生していないか」と構える精神的負担も軽減することができます。また介護を受ける側にとっても、「何かあればすぐに気づいてもらえる」との安心感に繋がります。技術はヒトの労力を代替するだけではなく、心に寄り添っているといえるでしょう。



②介護における「ロボット」とは

「ロボット」と聞くと、みなさんは鉄人28号やPepperのような、ヒトや生物を模した姿を想像するかもしれません。介護や福祉の現場における「ロボット」とは「ロボティクス(ロボット技術)」のことを指し、目につきにくいところでも活躍しています。 お客様に電動アシスト付きの歩行器をご紹介する際に、「これも介護ロボットのひとつなんですよ」とお話しすると、たいへん驚かれることがあります。上り坂では自動でパワーアシストが働きスイスイと、下り坂では自動でブレーキが作動してゆっくり安全に進める。この制御もロボット技術です。


↑ロボット技術を使用した歩行器の例

介護ロボットに限らず機器やツールは絶えず進化しますが、「新しい」ものが必ず「良い」とは限りません。たとえば、かなり古い型の介護ベッドでも、その機種特有の機能を備えているケースがあります。その知識を持ったうえで、私たちはプロとしての提案・活用をしていかなければなりません。


↑毎年夏に開催する「みえ福祉コレクション」の様子

また、専門職や一般の方に対しても、弊社が主催するイベントや講習会などを通じてさまざまな知識や情報をお伝えしています。毎年夏に開催する『みえ福祉コレクション(みえコレ)』もその1つ。介護・福祉に関心のある全ての方に、正しい知識や意識を持ってもらう機会となっています。



③ひとりじゃないからできること

福祉の現場では、「他職種連携」ならぬ「多職種連携」がトレンドとなっています。ひとりの生活を支えるために、さまざまな専門職が協力し、1+1=2以上となるように取り組んでいます。 弊社では、車いすや歩行器といった福祉用具のレンタル・販売、介護施設運営、保育園運営を事業の3つの柱としています。福祉用具の事業部と介護施設の事業部がコラボレーションし、合同での勉強会や介護施設で生活する方への迅速な福祉用具の導入などを対応してきました。


↑高齢者施設の入居者と、保育園の園児が交流するイベントも

福祉用具を取り扱う弊社だからこそ、施設の職員も、当たり前に福祉用具の存在を知ることができます。福祉用具導入のコンセプトは、「介護をする人と介護を受ける人、双方がラクになること」。簡易的な福祉用具の導入でも、人の手で行う介護よりもはるかに安心・安全になります。


↑「スライディングボード」を使ったベッドから車いすへの乗り移りの様子

最近では、「介助グローブ」と呼ばれるナイロン製の手袋が施設で活躍しています。ナイロンの滑りを利用して、ベッドや車いすの座面と座っている人との間に手を滑り込みやすくさせ、体勢の移動をしやすくするものです。
時にはこんなアナログな方法でも、ちょっとした改善で現場は変わります。IoTを活用した開発を通じて社会へ価値を提供するといった大きな取り組みはもちろん、ひとつひとつの小さな積み重ねも大切にしています。



④AIに奪われない仕事

「AI技術の発展によりなくなる仕事」が話題になりました。単純作業やオペレーター的な業務は取って代わられる可能性がありますが、ヒト独自の創造性や発想、気持ちに寄り添うことに関わる業務はより重要性を増してくるでしょう。 介護施設における移乗介助や服薬管理、請求処理といった業務は、機械の方が正確でより得意とするところでしょう。しかし、それらと同時に行われるヒトの感情に寄り添う仕事や工夫は、ヒトならではのものです。


↑グループ法人運営施設での一例。居室に実家の仏壇を持ち込み、「家族と一緒に暮らすことができる」と喜ばれています。

たとえば、私たちのグループ法人が運営する「特別養護老人ホーム 津の街」では、施設がその人の<家>となるようなさまざまな工夫をしています。ご自宅から仏壇を持ち込んだり、石造りのような表札を設えたり、おひとりおひとりが持ち込んだお好みの食器を使っていただいたり、生活感を出すためにあえて炊飯器や電子レンジをリビングから見える位置に置いたり……。
こういった「暮らし」づくりのクリエイティブさは、ヒトならではの仕事です。こういった取り組みの成果もあり、今年度には三重県内で3施設目(広域型において)となる「ユニットリーダー研修実地研修施設」としての認定も受けました。今後も、介護の魅力やクリエイティブさを発信しながら、他施設を牽引する活動も行っていきます。



⑤IoTが広げる介護業界の領域

「介護の仕事」と聞くと、まず真っ先にイメージするのは、老人ホームで働く介護職の姿でしょう。しかし、実際には、高齢者の医療面や身体能力の維持・向上を支える各種専門職のほか、介護用品メーカーの社員やその製品の技術開発スタッフなど多岐に渡ります。 弊社には、社内や介護施設におけるシステムを独自に開発する「研究開発事業部」があります。この部署の役割は、介護現場や介護を受ける人の負担を軽減するだけでなく、従来の「3Kイメージ」の払拭にも繋がるような大きな取り組みです。


↑パーツ選び1つから取り組む、地道な作業からミライが始まります

今取り組んでいるプロジェクトは、介護現場の負担を軽減するための製品開発です。たとえば、歩行が困難な方のベッド上での起き上がりをセンサで検知して介護スタッフに通知することで転倒防止をはかったり、尿量をセンサで計測し事前にトイレに行くタイミングを介護スタッフに通知することにより最終的におむつが不要になることを目指したりしています。
今後は、機械学習を取り入れ検知や予測の精度向上を図るつもりです。また、それ以外にも目的実現に資する技術が出てくれば、そういったものも取り入れていくことでしょう。
新しい技術と発想で、ミライを作る。ゼロから創り上げるのでたいへんなことも多いですが、そのぶん楽しみもいっぱいです。



⑥「効率化」とはやさしい気持ちの表れ

少子高齢化が進む中で「働き方改革」が叫ばれ、それに伴って会社の中では「業務効率化」に腐心しています。一見冷たい響きがあり、労働者側からすると締め付けられるイメージのある業務効率化ですが、捉え方を変えればポジティブな意味を持ってきます。 私たちも、法人として事業を拡大していく中で、効率的な処理が課題となっていました。介護保険制度では必要な帳票が多く、また、その扱いには万全を期さなければならないからです。その対応として、法人設立当初から顧客情報をシステム管理したり、近年ではすべての相談員にiPadを貸与し活用を推進するなど、先進的な取り組みをしてきました。


↑自社で構築した顧客管理システムは、iPadを活用することで外出先でも参照することができ、迅速な対応を可能にします


↑自社で運営する「やる気保育園」

生産性を訴求する「業務効率化」は、ひとたび冷たい印象を与えてしまうかもしれません。しかし、効率の追求は「自分にもっとできることはないのか?」との思いであるとも捉えることができます。業務効率化を通じて、お客様にとっても、取引先にとっても、会社・社員にとっても<三方良し>の良い関係が作られていくことが、会社発展のうえでの望みです。
<三方良し>のために、自社で保育園運営などの環境も整備しています。よく働き、よく休み、よく遊ぶことは、社員本人、そしてサービスを受けるお客様、ひいては法人にも益のあることです。



⑦介護サービスは誰のため?

ときどき、介護サービスや施設を利用することに後ろめたさを感じたりする方のご意見を伺います。ですが、介護サービスはもともと、介護が必要な方と介護をする方のためのものであり、その視点は私たちのミッションでもあります。 私たちが提供するデイサービスや介護施設の存在は、介護をする家族のためのレスパイト・ケア(支援者の一時的なリフレッシュ)のひとつです。介護を頑張りすぎて家族が倒れてしまうことは、共倒れにも繋がります。技術や専門家に任せることは「冷たい」ことではなく、介護する方の心のゆとりを生むために必要なものです。


↑食事は生きる楽しみのひとつ。おいしさはもちろん、季節感を大切にしています

私たちには、介護を受ける方も、介護をする方も大切にしたいというミッションがあります。それは、「あなたと、あなたの快適生活を応援したい」というキャッチコピーにも表れています。


↑介護を受ける人と介護をする社員双方が快適になるように、介護ロボットも導入しています

後ろめたさを感じずに介護サービスを利用していただけるよう……むしろ介護を必要とする方に「ココに行きたい!」と思われるサービスづくりが私たちには必要ですね。



⑧SASUKEとわたしたち

私たちが運営する介護施設では、2016年から介護ロボットを導入しています。機械と人間、それぞれの得意分野で力を発揮して、お客様にサービスを提供しています。 私たちが活用する介護ロボットのひとつである「ロボヘルパーSASUKE」は、お姫様抱っこのようなかたちで人をベッドから車いすへ移乗させることができる介護ロボットです。


↑私たちの施設で活躍している「ロボヘルパーSASUKE」。起き上がりや移動の動作を支援します。

今まで人の手で行ってきた部分をロボット技術で代替するメリットは、社員の腰痛予防やコスト削減だけではありません。介護施設の入居者様との日常生活上の関わり・心のケアの充実へ重点を置くことができます。
また、入居者様にとっても、最初は介護ロボットを活用したサービスを受ける経験がなく不安かもしれませんが、安全な介護を実感し安心していただけるように施設スタッフが努めます。
実際的な「安全」はロボットのSASUKEが、心理的な「安心」は人間である私たちが。ロボットと人間で特性を使い分けながら、「安全」と「安心」の両立に取り組みます。




⑨ライフ・テクノだからこその開発

私たち「ライフ・テクノサービス」の社名の由来は、「ライフ(life)」=暮らし、「テクノ(techno)」=技術、「サービス(service)」=助力・貢献。技術であらゆる人の暮らしをより豊かにする、そんな世界を広げていきたいという思いが込められています。 私たちが創造したい価値は、福祉と情報の分野を中心とした豊かな価値です。その一端として、介護現場の声を吸い上げてオリジナル車いすや手すり、徘徊感知器を開発してきました。特に、福祉とITの融合は特筆すべき部分で、自社の研究開発事業部もこの分野で介護現場の負担を軽減するため製品開発のプロジェクトに取り組んでいます。


↑自社オリジナル車いす「Bravo S(ブラボー・エス)」は、外出支援のコンセプトと地域とのつながりを表現するために高田本山・伊賀城で宣材写真を撮影しました。

↑サービス提供だけではなく、技術開発を通じて価値を創造しています。

この取り組みは、自社の環境整備にとどまりません。私たちは、サービス提供や製品・技術開発を通して介護に携わる人の環境を整備していきたいと考えています。そして、環境を整備することでそこにいる個々人が本来発揮すべき役割を果たし、成長していくことができます。
業界を構成するのはヒトであるからこそ、ヒトの成長は革新に繋がります。その一助になりたい……そんな願いがあります。



⑩私たちが描くミライ

平成9年に津市渋見町で創業以来、「福祉」の分野で一翼を担ってきた私たちは、事業の拡大を続けながら地域に根ざした活動を行ってきました。事業を拡大し、提供するサービス種別が増えても、根底にある思いは同じです。 福祉用具レンタル・販売、バリアフリー住宅改修工事、在宅介護支援サービス、介護施設運営、保育園運営、ソフトウェア開発など、多彩な分野で介護福祉に携わる弊社だからこそ、自社の人材だけでなく業界にも働きかけることができると考えています。


↑技術の革新をすすめながら、それを使うヒトへの視点も大切にする。お客様も従業員も、笑顔が増えていくことを願っています。

IoTは介護・福祉に携わる私たちが本来担うべき役割を叶えるためのツールであり、システムや機械の導入による効率化は「冷たい」ものではありません。IoTを活用した効率化により、ヒトが本来担うべきひとりひとりに寄り添うことやクリエイティブであることが果たされ、介護がよりやりがいのある仕事になっていく。そして、お客様の満足度も向上する。

それが、私たちの描くミライです。
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